前回までのあらすじ:
利益を細かく刻みながらサクサク稼ぐため、スキャルピングトレードを始めたぱおにゃん。
しかし不安定な取引基準と危ういメンタルのため、錯乱トレードを繰り返します。
ポジポジ病も発症し、損失が重なった結果行きついた先はハイレバトレード。
思考放棄からの放置プレイで、口座は含み損で真っ赤に染まります。
そして証拠金維持率が100%を下回った時、証券会社から1通のメールが届いたのでした。
追証のお知らせ…?
ぱおにゃんは週明けの朝、証券会社から来たメールを読んで震えあがりました。
//証拠金維持率が規定の割合を下回りました。本日18時までに証拠金維持率が既定の割合を維持出来ない場合、強制決済されます//
FXは証券会社に入金してあるお金を担保に取引を行います。
追証とは、証拠金維持率が一定の%(今回は100%)を下回った際、担保に必要な額を補充しないと、強制決済(損切)しますよ、というお知らせです。
口座残高を携帯で確認してみると、残額を全て入金してもギリギリお金が足りません。
ヤバイ!! 金を搔き集めないと!!
ぱおにゃんの顔面からは血の気が引いて真っ白です。
まるでイカのような透き通った白さです。
で、でも今日は平日…
そう、ぱおにゃんはサラリーマンなのです。
平日は普通にお仕事があります。
仕事中に入金する暇なんてありません。
真面目なので、仮病を使って仕事を休むなんてこともしません。
仕方ない…昼休みに行くしか…!
実はぱおにゃんは通勤に便利という理由から、会社の近くに住んでいました。
なんと驚き、自宅まで徒歩10分です。
ぱおにゃんは考えました。
「自宅から会社までの往復が20分、家中の金を搔き集めて、ATMまで走って入金するのに15分…」
頭の中は仕事の時より高速回転します。
扇風機の羽より激しいスピードです。
急速回転する脳からは、入金までの最短スケジュールを叩き出します。
ATMから自宅まで戻って、証券口座に入金操作するまで15分…
合計50分です。お昼休みは1時間あるので、余裕をもって会社に帰れます。
ちなみにお昼ご飯を買う時間も、食べる時間も当然ありません。
仕事前にはトイレに行く習慣があるので、ご飯どころではないのです。
お仕事に集中するために必要なので、これは譲れません。
これしかない!
こうして追証入金作戦が決まり、ぱおにゃんは出勤することにしたのでした。
仕事中は、昼休みはまだかと気を揉みながら時計をチラ見し続けます。
そして昼休み。
ダッシュで家に帰ります。
金…金…
鬼の形相で緊急時用のお金入れから札束を取り出します。
それは万が一病気で動けなくなった時用の、手元に残しておいた1か月分の給金でした。
いざという時にとっておいたお金が今、役に立つのです!
これと財布の金をいれればギリギリ足りる!!
本当に瀬戸際でした。
財布に残ってた万札を全て抜き取り、緊急用の札束と合流させます。
ATMへGO!
慌ただしく家を飛び出します。
赤信号でも関係なく突っ切りたい、そんな気持ちをグッと我慢して信号はちゃんと待ちます。
交通規則は守らなければなりません。
信号が変わると走り出します。
うおおおお急げえええええ
ただし他の人にはぶつからないように気を付けます。
万が一激突したら大変な迷惑です。
お互い怪我をしたら、お互い困りますし、入金も間に合わなくなってしまいます。
早く入金しなきゃっ…
焦る気持ちとは裏腹に、安全に気を付けながら駆け込んだATM。
お昼なので人はいませんでした。
ガラガラの閑古鳥です。
やったぜ!
操作盤を手早くタップしていきます。
ガガガガウイーン
無機質な音と共に、汗と涙の結晶だった札束達は目の前から消え去りました。
ああ…ボクのお金が飲み込まれていく…
寂寥の想いが募ります。
しかしATMにお金が飲み込まれたのを確認した後は、キャッシュカードを引き抜いて自宅にとんぼ返りです。
一刻の猶予もありません。
は、早く帰らねば…
息をつく間もなく、自宅に向けて駆け出します。
タダイマァァァァ
誰もいない部屋に駆け込みます。
証券口座に、はよ入金!
目をカッと見開きながら、手早くIDとパスワードを入力します。
カタカタカタ…ッターン!
入金操作も素早く行います。
証拠金維持率を確認すると、100%を超えて余裕も生まれました。
ほっと一息ついたところで、時計を見ると午後の業務開始まであと15分でした。
予定より少し遅れています。
ひゃあああ早く会社に戻らなきゃー
大慌てで家を飛び出しました。
午後のお仕事も頑張るぞー!
残り僅かな希望と隅に追いやった不安を胸に、気合を入れて笑顔で走り出したのでした。
次回養分伝説第10話「出会い~FXコミュニティ入会~」
養分の歴史がまた1ページ…