第１話 宣戦布告
「働きたくないでござるー！」
「楽して儲けて遊び暮らしたいー！」
今は労働からの解放を求め、多様な稼ぎ方が生まれている時代です。
しかしその一方で、投資で破産、詐欺で一文無し、ギャンブル依存症なども社会問題化していました。
そんな問題を解決するために、政府は本格的に国民の金融リテラシーを高める必要があると判断しました。
そして生まれたのが、投資・賭博について正しく学ぶための機関「ふるれば学園」です。
ここでは種族・年齢・性別を問わず学ぶことが出来ます。
勝ち申した！！ オールイン！！
元気な声が響きます。
ここはふるれば学園、MAXBETの部室です。
室内には雀卓や、トランプの積まれたテーブル・パソコンなどが所狭しと置いてあります。
その一角では今日もゲームに興じている者達がいました。
今日も小遣い頂き申した！
高らかに勝ち誇る彼の名はぱおにゃん。
大きな耳としなやかな長い鼻が特徴のぞうさんです。
彼は耳をパタパタさせてご機嫌な様子です。
いやー、勝ち申されてしまったなー
ニコニコしながら相槌を打つ彼の名はアバケロ。
小柄な体躯に鮮やかなエメラルドグリーンの肌をしたカエルさんです。
今日も楽しかったなー。
そういえば部長のはなころさんはどこへ？
今日はたまこさんのところに、
遊びに行ってるみたいですよ
そうなんだー
たまちゃんとも、いつか遊べたらいいなぁ
二匹がお話していると、
バーン！
突然部室のドアが吹っ飛んできました。
ひぃー！
真っ黒になったドアが飛んできた！
唐突な出来事にびっくりしたぱおにゃんは、テーブルの下に隠れました。
耳もピッタリ閉じてプルプル震えています。
イィカァジィルゥブシャァァァァァ！！！！
部屋の中へ飛び込んで来たのは、純白の肌に１０本の触手を持ったイカさん。
部長のはなころです。
床一面が真っ黒になった部屋に堂々と入ってきます。
はなころさん…またあちこちイカスミまみれにして…
ため息と共に雑巾で床拭きを始めるアバケロ。
何があったんですか部長！
アバケロを手伝うことなく、テーブルの下から問いかけるぱおにゃん。
うむ、実はな！
オティラボに挑戦状を叩きつけてきた！
二本の触手で腕組みしながら言い放ちました。
えぇーっ！？
びっくり仰天！
オティラボと言えば、プロ級の腕前を持つと言われる投資家や雀士を抱える、ふるれば学園内では注目を浴びている集団です。
え？ オティラボは我が部とライバル関係にはありますが…
何かあったんですか？
学内で最強なのはどっちなのか、白黒つけようじゃん！っていう話になってね
ポーカー・麻雀・FXで対戦することになったからよろしくね！
部長のはなころはニヤリと笑みを浮かべます。
よくわかんないけど、絶対勝ち申す！！
なんだか良くわからないまま、部員のぱおにゃんは意気込みました。
部長！我が部の威信にかけて、
絶対勝ち申しましょう！！
うおおおおおお
うおおおおおお
イカの触手とぞうさんの短足が、雄たけびと共に天に突きあげられます。
あっ、部長あんまり興奮しないで…
たぎるぜええええ！！
イィカァジィルゥブシャアアアアア
はなころは口から噴水のごとくイカスミを吹き出しました。
あっ
あっ
あっ
部室内がイカスミまみれになります。
辺り一面真っ黒です。
はなころは興奮するとイカスミを撒き散らす習性があるのでした。
大会の詳細について打ち合わせしてくるから！
じゃっ！ そういうことで！
はなころは慌てた様子で部屋から飛び出し、スタコラサッサと逃げ出していきました。
部室内に二匹がポツンと取り残されます。
ぱおにゃん
はい
片付け、手伝ってね
はい…
二匹はイカスミでグラデーションになった部室内を掃除し始めるのでした。
—時は遡り、数時間前—
チーッス！
遊びに来たよー
はなころは、ふるれば学園のカジノバーに遊びに来ました。
このバーでは、お酒を飲みながらゲームに興じることが出来ます。
たまちゃん今日一人～？
はなころはバーカウンターで一人佇む青年に声を掛けます。
やぁ
カウンターで静かにグラスを傾けていたペンギンが振り返りました。
全身爽やかなコバルトブルーの肌に、お洒落なシルクハットを被っています。
彼の名は、たまこ。
隣いイカい？イカだけに
軽くジョークを飛ばしながら、はなころが隣の席にやってきます。
お、おう…
イカジョークにやや面喰いながら、たまこは頷いて席を勧めます。
フゥー。何飲んでんの？
日本酒さ。アイスブレーカーっていう限定受注生産品なんだ
たまこの持つグラスの中は、南極海を彷彿とさせる透き通ったコバルトブルーの波が揺らいでいました。
おお、きれいな色のお酒だね
でしょー！ ほらあのビンなんだけど
たまこは様々な酒瓶の立ち並ぶ棚を指しました。
あっ、ラベルにペンギンの絵が描いてある！
ラベルには親子連れのペンギンが２匹描かれていました。
ペンギンの頭上にはIce Breakerの文字、足元には玉川純米吟醸と書いてあります。
清涼感のあるイカしたラベルです。
キミも一緒にどう？
いいね、一杯頂こう
２匹は仲良く酒を酌み交わし始めました。
仲良く談笑しながら、グラスの中身も空になる頃…
そういえば最近部活どう？
順調よ。部員は凄い増えたし、
ポーカーに麻雀、FXもプレイヤー人口が増えていい感じ
素敵やん
まあね、向かうところ敵なしって感じよ
ふふん、とちょっとドヤり気味のはなころ。
ほう、それは聞き捨てならないね…
この学園のNo1は我々オティラボだよ？
フッ…それはどうかな…
はなころは不敵な笑みを浮かべます。
穏やかな雰囲気が一変、はなころとたまこの間にバチバチと火花が散り始めました。
どうやら両者の闘志に火が付いたようです。
やんのか？おおん？
ならばどちらが真の強者か、白黒つけようじゃないか！！
こうして、たまこ率いるオティラボと、はなころ率いるMAXBETの壮絶な対決が火蓋を切って落とされたのでした。
次回、ぱおーるいん第２話 選手選抜
明日も元気にALL IN！